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ろべかる!最終話 前編「どうして!?」

by
フェルナンド・トースト
フェルナンド・トースト
お酒は温めの燗がいい
肴は炙った烏賊でいい
 
女は無口なひとがいい
灯りはぼんやり灯りゃいい
 
有線で演歌が流れる居酒屋。そこでは二人の青年がお酒を飲んでいました。
 
「おら!たかし!飲んでるか!?」
「飲んでる飲んでる。...ゆうたろう君は少し飲み過ぎじゃないのかなあ」
 
あれから幾年が過ぎ。二人は小学生から中学生、高校、そして大学と進みましたがなぜか全て同じ学校だったという腐れ縁です(笑)
その後の二人について、少しお話をしましょうか。
 
ちょうど二人フッティスタでしのぎを削っていた小学生の頃、「フッティスタ全国大会」が開催され、全国的な人気を博していました...ああ、そこで「おいおい」と突っ込みたいアナタ。いいですか、このお話は「そういう世界線」です。咲みたいなもんです(笑)
ゆうたろうくんは意気揚々と、たかしくんは所在なさげに、と対照的な態度で大会に参加しましたが、二人は決勝まで進んで対戦。ロスタイムにロベカルのフリーキックでたかしくんが優勝、というドラマもあったりしましたがここでは割愛します。
その後も第二回、第三回と大会は開催され、二人は大会常連となりちょっとした有名人になったりもしましたがこれも割愛(笑)
いちおう、ゆうたろうくんの名誉のために申し添えておくと、ゆうたろうくんも何度か優勝しています。いえ、それどころか通算の回数ではトップだったりしますが、第一回優勝はたかしくんだったもので、ゆうたろうくんは今でも時々その事を持ち出してます。粘着質ですね。
さて、中学、高校でもフッティスタに精を出していた(なんかいやらしい)二人ですが、やはり大会常連の地位というのは変わらず、そうなると周囲も放っておかない。結構モテモテな日々を送っていたようなのですが、二人とも朴念仁というか女の子と付き合う時間があるならフッティスタするわい!てな感じだったので、非常にもったいないことこの上ありません。書いてて腹立って来たぞ(笑)
 
そして二人は同じ大学を出てーゆうたろうくんが裏からいろいろ手を回して同じ学校に行けるよう計らったという説もありますーゆうたろうくんのお父さんの会社へ。当初たかしくんはいい顔をしなかったのですが、ゆうたろうくんの一言が効きましたね。
 
「おまえが来ないんなら、こっちが行くからな」
  
もう立派なストーカーですね。ゆうたろうくんのお父様の会社に行かなくても、ゆうたろうくんが勝手に着いてくるとなればどうしようもない。たかしくん、あきらめてゆうたろうくんのお父様の会社にお世話になることになりました。
そして数年、もう新人ではないけれどベテランや中堅でもないよね、な入社後三年目のこと。
ある新入社員の女の子がたかしくんを訪ねてきたのです。
 
「たかしさん、ですよね」
「ええ、まあ」
 
たかしくんも昔、フッティスタで有名になってしまった過去がありますから、いきなり自分の名を呼んでくるような相手にはどうしても警戒します。
しかしたかしくんの警戒をよそに、彼女はぱっと顔を輝かせてこう言いましたー
 
「私、優子です。勇太郎の妹の」
 
ああ、道理でなんとなく見覚えがあったのか、とたかしくんは思い、同時に過去の事を思い出します。
 
「ネドベドは元気?」
「はい、最近はユーベ縛りとラツィオ縛りとでどっちがより生きるのか研究中です」
「うーん、普通にユーベの方が強くない?」
 
ちちち、とかゆうこちゃんは人差し指を左右に振ります。
 
「そりゃ、ユーベの方が強いし、勝てるけどネドベド埋もれちゃうから」
「ネドベドのチームにしたいのかあ...でもキャプテンシーのネドベドはユーベユニだよね」
「もうたかしさん意地悪!...ユニはあえて無視の方向で(笑)」
 
ゆうこちゃんは時計を見ました。
 
「あ、いけない!オリエンテーションの途中なんです、それじゃこれで。またフッティスタ教えてくださいね」
 
その後ろ姿を見送りながら、あのこまっしゃくれた小娘がなあ、とたかしくんは感慨に浸っていましたが、たかしくんだってまだまだ世間からは「若造」と言われてしまう年齢ではあるのでした。
 
たかしくんとゆうこちゃんはネドベドの件以来ほぼ没交渉でした。まれに、たかしくんがゆうたろうくんの家に遊びに行ったときに玄関先で出迎えるくらいで。
 
でも。
 
ゆうこちゃんはずっと見ていたのです。たかしくんのことを。
はじめはネドベドを助けてくれたいい人、くらいの位置付けだったのですが、お兄さんのゆうたろうくんからたかしくんがいかに優れたフッティスタプレーヤーであり、いかに素晴らしい自分の大親友、心の友であるかを(ちなみにたかしくんの方では親友とまでは思っていなかったりします)聞かされるうちに、彼への思慕の念は強まっていました。でも、言い寄る女の子が多くてうっとうしい、ということもお兄さんから聞いていたので言い出せず。
 
だから、ただ、見ていたのです。
ずっと。
 
そして社会人として巡り会うことになります。ゆうこちゃんはこの時、もう見ているだけは辞めると決めていましたし、またたかしくんも、ゆうこちゃんの優しい心根を知っていましたから、お互いに牽かれ合うことにそう時間はかかりませんでした。
 
そして明日、二人は結婚します。
 
 
 
 
 


そういうことなので、花嫁の兄たるゆうたろうくんとしては酒のひとつも飲まずにはいられないのです(笑)
 
「まあ、しかしあれだよ?ホントにたかし、おまえ、あいつで大丈夫?」
「大丈夫も何も、君の妹だろ」
「いやー、兄貴の俺から看てもさ?ちんちくりんで胸ぺったんだしさ」
「そうかな、それに僕は彼女の背格好や胸囲と結婚するわけじゃないからね」
 
じいっとゆうたろうくんはたかしくんの顔を見ます。そしていきなり破顔。
 
「まあ!明日からはおまえが俺の弟になるかと思えばそれはそれでいいか!」
「え、僕の方が誕生日早いのに」
「ばーろー。おまいはオレの妹と結婚すんだぞ?てことは義理の弟じゃねーか」
「えー...納得行かないなあ」
 
ひとしきり二人は笑い、ふとゆうたろうくんは真面目な顔になりました。

「ゆうたろうくん...?酔った?」
「なあ、たかし。お前、なんでフッティスタを辞めたんだ...?」



 
作成日時:2021/03/05 22:47
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コメント( 5 )
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ヴィッセリスタ
ヴィッセリスタ
3月7日 12時6分

お忙しい中、有り難うございます‼︎
 
「中編」大歓迎‼︎
でも「フランダースの犬」風味も気になるなぁ…
パラレルワールド、あってもええんやで…

フェルナンド・トースト
フェルナンド・トースト
フェルナンド・トースト
3月7日 14時45分

いやもう、フランダースの犬はまんまです。日本は教会ないから...みたいな(笑)でも下書きは途中までしてるんで、まあ気が向いたら(鬱展開はやめとけ)

ヴィッセリスタ
ヴィッセリスタ
ヴィッセリスタ
3月7日 16時7分

ロベカルの引っ張るリアカーに乗って天に駆け昇るたかしくん…
駄目だ…
不謹慎だけど…
意図せぬ笑いが…

フェルナンド・トースト
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